物忘れ
わが国では超高齢社会となり、お年寄りの方が急増しています。80歳代、90歳代の方も多くなり、高齢の方がさらに高齢の親の暮らしを助けている家庭も珍しくなくなってきました。これに伴い、「最近、物忘れがひどくなった」、「認知症ではないか」と心配されて脳神経外科を受診される方が増えています。しかし、殆どの方は認知症ではなく、物忘れと診断されます。
一例を挙げますと、昨日の朝食のメニューを思い出せないことは「物忘れ」です。年をとるにつれて脳が衰えてきますので、記憶力が低下することは誰にも起こります。これに対し、朝食を食べたことを忘れている場合は認知症の疑いがあります。朝食の内容ではなく、食事という行為があったこと自体を忘れることが問題となるのです。
現実的には、専門医でないと物忘れと認知症を正確に判断することは難しいと思いますので、まずは当院を受診して下さい。その際には、ご家族の方や、診療内容を聞いて頂いても問題のない方と一緒に受診することをお勧めいたします。ご本人の普段の生活状態をよく知っている家族の方などから話を伺うことにより、客観的観点からよりよい診療を行えるからです。当院では、問診、CT、MRIの他にも、改定長谷川式簡易知能評価スケールやミニメンタルステート検査などの認知機能検査を行い、より精度の高い診断に繋げております。
- このような方は当クリニックにご相談を
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- 親しい友人や近所の人の名前を度忘れすることがある
- 今やろうと思っていたことを忘れてしまった
- 昨日の食事を思い出せないことがある
- 忘れていることも、しばらく考えていると思い出せる
- 料理などの家事の手順を忘れることがある
- 布などを置いた場所を思い出せないことがある
認知症
認知症は、正常に働いていた脳の機能が低下し、記憶や思考への影響が見られる疾患です。加齢に伴って発症リスクが高まっていきますので、超高齢社会の日本では非常によく耳にされる疾患だと言えるでしょう。
認知症になると、物事を記憶したり判断したりする能力や、時間や場所・人などを認識する能力が低下するため、実生活に支障が生じてきます。今まで普通にやれていたことが急にできなくなった、通い慣れていたはずの道がわからなくなった、同じことを何度も聞いたりするようになった。このような症状が見られた方は認知症が疑われますので、当院までお早めにご相談ください。
認知症の種類
認知症は一つの病気ではなく、いくつもの種類がありますが、全体の約9割はアルツハイマー型認知症、または脳血管型認知症だと言われています。このうちアルツハイマー型認知症は、アミロイドβと呼ばれる特殊なたんぱく質などが脳に溜まることで発症します。このたんぱく質によって神経細胞が壊れて減ってしまうため、神経が情報をうまく伝えられなくなり、機能異常を起こすのです。また、神経細胞が死んでしまうことによって脳という臓器そのものも萎縮していき、脳の指令を受けている身体機能にも影響が出てきます。アルツハイマー型は、認知症のなかでも一番多いタイプとされており、特に女性の方に多く見受けられます。
一方、脳血管型認知症は、脳血管の障害が原因となって発症します。脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などを患うと、脳の血管が詰まったり出血したりして神経細胞が死んでしまい、認知症状が見られるようになります。